暗黒館の殺人(上・下) 綾辻行人 


綾辻 行人 / 講談社(2004/09/10)
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九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ異形の館―暗黒館。光沢のない黒一色に塗られたこの浦登家の屋敷を、当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、<ダリアの日>の奇妙な宴に参加する。その席上、怪しげな料理を饗された中也の身には何が?続発する殺人事件の”無意味の意味”とは・・・?

綾辻氏の力作、総原稿枚数二千五百枚という長編ミステリです。
館シリーズを全部読んでから読むほうがいいですね。
これは。
じゃないと真の面白さは実感できないでしょう。
館シリーズの集大成にして原点とも言うべき作品ですから。
それぞれの館シリーズの内容及び登場人物がリンクしてますからそれを見つけながら読むのも面白いです。
あとカバーデザインを京極夏彦氏が
図版作成を小野不由美氏が手がけておられます。
買ってきた日は館に足を踏み入れる前にこれで興奮したのでありました(アホやん)

話は10歳以前の記憶のない玄児が同じ大学に通う学生である中也(彼の名前は最後まで明かされない。彼の視点で話が進むので「私」と表記されている。中也は玄児がつけたあだな)を伴って熊本の山奥に建つ「暗黒館」に帰省することにより始まります。
十角塔から人が落ちるのを目撃する中也。
偶然にも命を取り留めた青年の名は江南。
暗黒館に住む畸形の美しい双子の姉妹。
極端に人目を避ける少年。
黒いフードをかぶった幽鬼のような人物。
心を壊してしまった母達。
せむしの使用人。
知恵の遅れた感じの子供。
登場人物もいかにも、って感じの人物が配され
幻想的で幻惑的な世界に誘われます。

18年前の密室殺人や、現在の殺人。
殺人の手段と機会の不一致によって犯人の目星はつきません。
連続する殺人。
怪しげな風習や評判のある屋敷で起こる殺人にドキドキとしてしまいます(変?)

上下巻でかなり重たいのかな?と思ってたのですが、意外とさくさくと読めます。
割とスピーディな話の展開。
殺人の謎だけでなく「ダリアの宴」の謎とかもあって怪しげなムードは満点です。
ダリアの宴の謎はひっぱりすぎかなとは思いますけど(笑)
まぁ最初から中也の名前が臥されている事や、都合よく次から次へと記憶喪失者が出てくること。
起こる現象の奇妙なほどの一致なんかは、さすがにやりすぎな感じも(笑)
この辺がちょっと「霧越邸」チック?
まぁ幻想の館へ誘われているのだからそういうのもありかな(笑)

個人的には「館シリーズ」中もっとも長大な作品でありながらもっともライトな読み口の作品だったのではないかと思います。
「時計館」のような凄惨な殺人シーンもありませんしね。
分量は多いですけど、そう苦にはならないです。
霧の中の幻惑。
紗がかかったような空気を感じとれたらあなたはもうこの館に足を踏み入れています。
幻惑と哀しみの館へようこそ。
心行くまで綾辻ワールドを堪能してくださいませ♪