鳴風荘事件─殺人方程式U─ 綾辻行人 


綾辻 行人 / 光文社(1999/03)
Amazonランキング:272099位
Amazonおすすめ度:


六年半前の月蝕の夜、美島夕海の姉・紗月が惨殺された!──夫の明日香井叶ではなく、双子の兄・響を伴い、鳴風荘を訪れた深雪。再開した友人たちの中には、死んだ姉そっくりに変貌した夕海の姿が……。その夜、再び不可解な殺人事件が勃発する!犯人は何故、死体の髪を切って持ち去ったのか!?
著者が初めて「読者への挑戦」を付した長編本格推理の傑作!

今回は深雪の同窓会で起きる殺人事件。
またしても入れ替わった兄・響が事件を解決していきます。
いくら友達に見栄を張ったとはいえ、いくら双子だとはいえ自分の旦那のかわりにその兄を連れて行っちゃうのはどうかと思うんですが(笑)
傍目には夫婦として深雪と響は鳴風荘を訪れ、事件に巻き込まれます。
地震によって倒れた赤いペンキが廊下をふさぎ、偶然出来た「密室」から消えうせた犯人。
しかも、登場人物=容疑者のうち4人も片足が不自由な状態でとてもそのペンキの川を飛び越せそうに無く、他の人間にもアリバイが成立。
もっとも疑わしいのは明日香井深雪・・・。

赤いペンキで脱出口を絶たれるというのは「雪の上の足跡」系ですね。
猫の歩いた後はあるものの、人間の足跡はなく、容疑者中4人も足が悪くて飛び越せそうにない。
しかもペンキは地震という天災によって倒れたものだから、時間もいじれない。
地味な設定ですが、なかなか面白いトリックだったと思います。
実現可能かどうかはともかく。
その後起こる殺人は、屋根に穴が開いた家での密室殺人。
という不完全密室。
ドアの施錠トリックが使われているものの、天井に穴が開いているので密室ではない・・・。
奇抜なアイデアではないし派手なストーリー展開ではないですが、前作のトリックに比べれば現実的、といえるかな。
そこそこ厚みはありますが、気楽な感じでさらりと読める文章だと思いますので、前作とあわせて読んでみてはいかがでしょうか?