屍鬼(全5巻) 小野不由美 


小野 不由美 / 新潮社(2002/01)
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人口わずか千三百。三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた―。闇夜をついて越してきた謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも・・・。

ホラーです。
身近に起こりうる不可解な事件。
常識で計り知れないもの、それがホラーの恐怖の源ではないかと思いますがそれをうまく書かれています。
物語の舞台となる外場村はもともとの語源が卒塔婆からきている林業中心の村で未だ土葬の習慣がある村です。
村でえらいのは坊主と医者、という戦前ぐらい古いヒエラルキーのもと成り立つ古い村です。
ただそういう身分の差みたいなものがあったり古い風習が残ったりしてるからといって、村の人たちも外界と隔絶されてるわけでもなく、普通に大学に行ってまた村に戻って来たり、高校生をしていたりします。
つまり外場村の住人は私達のクラスメイトかもしれないし会社の同僚かもしれないというくらいの現実感を伴う設定です。
その外場村で起こる不審死。
貧血や風邪のようにしか思えない症状のまま突然亡くなる。
猛暑ゆえに体の弱い老人が・・・ということでもなく健康な高校生までが・・・。
そしてそれは連鎖して次第に被害者を増やしていく。
村にそぐわない洋館に越してきた、昼間には出歩けない病気だと言う親娘。
母と娘は病気で姿を見せず、時折村人と接触するのは父親と使用人の若い男。
村人は一様に異質な家族に不信感と不吉なものを感じる。
果たしてそれは排他的な村ならではの感覚なのか?
それとも・・・彼らには村人に恐怖を与える何かが本当に存在するのか・・・?

全部で5冊です。
ハードカバーなら上下巻ですよ。
長編です。
長いです。
しかしそれを苦痛と思わせないほどぐいぐいと惹きこまれます。
話には、村人がたくさん出てきます。
その他大勢村人っていう書かれ方じゃなくてちゃんと一人一人のキャラクタがちゃんと書かれてるので、読んでいて村の混沌ぶりがよくわかるようになっています。
どの人の気持ちも納得できてしまうので、どの村人もとても身近に感じられます。
気付いたら物語の中に惹きこまれてるって感じですね。

村の坊主で作家でもある静信が書く、「屍鬼」になった弟とその兄の話が象徴的に随所に差しこまれています。
これが読者である私達の不安をさらにあおってくれます。

以前から私はこの作品よみたかったのですが、あまりの分量に腰がひけてました(笑)
マヨチンさんのところで紹介されてるのを読んで、「これはよまなくては!」と土日をかけて読みました。
これから読もうかなと言う方、忠告しておきます。
全巻買ってから読んだほうがいいですよ。
途中で止めたら気になること間違いなしです。
金曜の夜か土曜の朝に全巻買って、土日を読書タイムにあててはいかがでしょうか?
土日を捧げるだけの価値のある本ですよ!