月の影 影の海 小野不由美 




 

「あなたは私の主、お迎えに参りました」
学校に、ケイキと名乗る男が突然現れて陽子を連れ去った。海に映る月の光をくぐりぬけ、たどりついたところは、地図にない国。そして、ここで陽子を待ち受けていたのは、のどかな風景とは裏腹に、闇から躍り出てくる異形の獣たちとの戦いだった。
「なぜ、あたしをここへ連れてきたの?」
陽子を異界へ喚んだのは誰なのか?帰るあてもない陽子の孤独な旅が、今始まる!

もともと講談社ホワイトハートで刊行されていましたが、人気が出たせいか途中から講談社文庫のほうが先に刊行されるようになりました。
元からのファンをなめてんのか!といいたいですが出版事情ですから読者にはどうしようもなく。
あとこのタイトル昔あった篠原千絵さんの「海の闇 月の影」っていうマンガにタイトルにてますよね。このあたり少女系っていう感じでしょうか?
ストーリーは至って乙女小説な始まりからです。
平凡で目立たない女子高生陽子。彼女の元に突然あらわれる金髪の男。
「あなたは私の主。お迎えにきました」という彼に戸惑いを隠せない陽子。
しかしその直後陽子達は化け物のようなものに襲われます。
ケイキと名乗るその男は「こちらでは守りきれぬのであちらの世界にお連れします」というが早いか彼女を別世界に連れ去ってしまった。
化け物の攻撃に別れ別れになる陽子とケイキ。
中国に似ているが異なる世界で、頼りになるものはケイキに「あなたのものだ」といわれた刀だけ。
次々に襲い来る化け物や、陽子を捕まえて殺そうとする人間達。
彼女は一体どうしてこの世界に来なくてはならなかったのか。信用できる人もなくあてのない一人の旅が始まります。

いやー確かに、少女向けといってもよく作られています。陽子の成長物語ってとこでしょうか。
例えどんなことがあろうとも、自分を強くするのは自分の心であるということを教えてくれます。
人を非難するのはたやすく己の非を認めることは難しいということですね。

世間ではこの作品は十二国記と呼ばれ、シリーズ化しています。
ただ毎回陽子が出てくるわけでも、時系列的に並んでいるわけでもないです。
陽子が飛ばされた世界は、花びら型になった大地があり国が12あります。
そしてその12の国それぞれに神獣である麒麟と王がいて、王は麒麟に選ばれることによって決まります。
血族主義ではなく、王の資格を持った人物が選ばれるというわけです。
そして王は国をよく治めている間は天命によりずっと生きています。天命をなくすと死にます。
だから500年も600年も生きている王様が存在する国です。

全体的に十二国の世界の雰囲気は、三国志とかの時代の中国です。
同じ中国系ファンタジーといっても田中芳樹氏の「創竜伝」とはまた異なります。

私はイラストが気に入っているので、いくら講談社文庫が先に出てもホワイトハートを待ちます。
イラストの山田章博さんは宮部みゆき氏の「ドリーム・バスター」でもイラストかかれてます。

NHKでアニメ化されましたね。
とてもテレビアニメとはおもえないほど凝った創りだと思いましたけど、テレビ版「月の影 影の海」に陽子の同級生が二人も異世界に一緒にいくことになるのは必要だったのでしょうか?
女子高生(名前忘れた)は異世界に行きたくてしょうがない女の子で、来たくもなかったのに無理やり連れてこられた陽子との対比の材料だったかもしれないですけどね。
もうひとりその女子高生の彼氏で陽子の幼馴染である浅野君は散々な目に遭ったうえに、この異世界で命を落とすのです。
彼女は無事もとの世界に戻れたというのに・・・。巻きこまれて不幸すぎるのでは?

テレビ放送では「風の万里 黎明の空」までがアニメ化されててラストでエンディングがOPテーマ曲に合わせて縦にスクロールしていって映画のようでした。
壮大な感じで。
OP曲はとても世界観を反映した素晴らしい出来だと思います。