マリオネット園 霧舎巧 

 



<あかずの扉研究会>シリーズ第4弾。
二本松カケルは竜王出版から「霧舎巧」というペンネームで今まで体験した話を小説として出版してもらえることになり、担当者水上和美を<あかずの扉研究会>のメンバーに紹介しようと大学に連れてきた。
メンバーが集まる部屋へ今度は女子高生沢入美由紀が訪れ、亡くなったはずの同級生から手紙がきたと相談を受ける。
亡くなった同級生の名は野々原涼子。「ドッペルゲンガー宮」で命を落とした女の子だった。そしてその手紙には時間と場所がしていされており、コインロッカーの鍵が入っていた。たどり着いた先でさらに出される問題。 五人のメンバーはばらばらの駅のコインロッカーへ向かう。
同じ頃、失踪した森咲枝を探して、閉鎖されたテーマパーク「マリオネットランド」内の斜塔―別名首吊塔―へやってきた後動悟。
塔内に閉じ込められた後動と咲枝と塔の持ち主遠々見に招待された客、竜王出版部長太田と刑事真村。そして塔の中での首吊り殺人事件。
犯人の意図は一体何か?
そしてその犯人とは?

今回はフーダニットです。
フーダニットに重点を置いていますが、ある種の「館もの」でもあります。
誰が誰に操られているのか?
というところが良く書きこまれているのでドキドキ出来ると思います。

結構おもしろい作りになってます。
特に、暗号なんかは島田氏や岡嶋二人氏や折原一氏の作品が使われてて、知ってる人にはくすっと笑えます。
それにカケルのペンネームが「霧舎巧」なんていうのも「巧」の説明に「隈能美堂巧」とか「匠千暁」とか名前が出てきます。
「隈能美堂巧」は島田氏の御手洗シリーズの短編「糸ノコとジグザグ」にも出てきますし、彼が主人公のライトタッチミステリもあります(わーん、タイトル忘れた!読みやすいですよ、これ)・・・マニアック。
「匠千暁」が西澤氏のキャラですね。

あとは「ジャバウォッキー」とかは有栖川氏の短編の中の一つですし(作家アリスシリーズです)
常に関わる館の設計者(渋谷進平(故人)らしい)が同じとかっていうのは中村青司を登場させた綾辻氏の館シリーズを彷彿とさせます。

新本格ムーブメントの最初の方たちが書いた作品に出てくる作品はいわゆる古典というもので、カーとかクイーンとかっていう感じですけど、霧舎氏のはその新本格の人達が題材として出て来たりするので、新本格から推理小説始めた人でも通な楽しみ方が出来ます。
本筋も良く考えられていますがそういう遊び心の部分でもくすっと笑える作品です。