空飛ぶ馬 北村薫 

 

北村 薫 / 東京創元社(1994/03)
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ヒロインの「私」の大学の先生は「どこのだれやらわからない人」をはっきりと夢にみたことがあるという謎を持ちかける。そして、先生は絶対に知りえない人物だったというのだ。なぜ、先生はその人物を夢に見ることができたのだろうか?それともそれは霊だったのか? 定年間際の先生が子供のころから抱えていた謎を、落語家の円紫師匠がさわやかに解き明かす。 他4編。

女子大生の「私」と落語家の春桜亭円紫の名コンビのデビュー作。
短編集です。
全部で5編。
どれも日常にあるささいな謎を解いていく、さわやかな短編です。

「織部の霊」
上記参照。

「砂糖合戦」
街で偶然、円紫師匠と出会った「私」
お茶を飲みに入った喫茶店で、目に留まった3人の女の子。
彼女たちは何杯も砂糖を競うように入れていた。
さて、何のために?

「胡桃の中の鳥」
「私」は友人たちと花巻へ旅行へ。
蔵王の山で、車のシートが盗まれる事件が発生。
しかし他のものは取られていない様子。
何の変哲もないシートカバーを犯人はなぜ持ち去ったのか?

「赤頭巾」
歯が痛み出していった歯医者で、出会った女性から
公園に出没するという「赤頭巾」の話を聞いた「私」
その「赤頭巾」は雨の日にだけでるという。
その女性は知り合いの絵本作家からその話を聞いたのだというが・・・。
「赤頭巾」の正体とそこに潜む謎を、円紫師匠が解き明かす。

「空飛ぶ馬」
幼稚園に送られた木馬。
大の男二人でかかえなければならないような重い木馬が
忽然と姿を消し、翌朝にはまた姿をあらわしたという。
なぜ、木馬は姿を消したのか?
クリスマスの心温まるお話。

どの話も、身近にあってもおかしくない日常に落ちていそうな
謎ばかり。
物悲しい話や、心温まるお話です。
でも日常の謎というのは、秘密から発しているから、
ちょっと物悲しいに偏ってしまうかもしれません。

私はこの「私」と円紫師匠が恋仲になっちゃうのかとおもってました(笑)
「私」は20で円紫師匠は40前。
まぁありえなくはない組み合わせかなぁと思っていたら、2話目であっさり妻子もちであると発覚!(笑)
そうかい、ラブロマンスはないのかい・・・。

落語の物語やら、純文学の内容やらにちょいちょい触れながら進むので
新しい世界に触れられる作品です。
普段あんまり触れませんもんね、落語なんて。
そっち方面にもちょっと興味を引かれる作品です。