姑獲鳥の夏 京極夏彦 

 

京極 夏彦 / 講談社(1998/09)
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この世には不思議なことなど何もないのだよ−古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ヶ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

推理小説といっても異色な感じです。
時代設定は終戦直後。
ちょっと怪しげな空気の漂う時代でもあります。
登場人物は結構多いですね。
古本屋で、陰陽師の京極堂が探偵役です。
いや、探偵役という言葉はふさわしくないですね。
まぁあえていうなら、てことです。
最後に謎を解き明かしてくれる人=探偵と定義すれば、探偵です。
しかし、人の記憶を読み取ってしまう探偵(職業で探偵でもあるし存在が探偵)アウトローな感じの刑事、鬱病の小説家などなど個性豊かすぎるメンバーが続々登場します。
話自体は小説家である関口の視点で語られていきます。

舞台は雑司ヶ谷にある産院。
そこには20ヶ月も身ごもったままの娘がおり。
その夫は密室から失踪。
さらには赤子の誘拐事件の謎まで。
次々と謎が出てきます。

文庫では分厚いほうだと思いますが、それでもあきさせないストーリー展開です。
関口とともに謎に翻弄されることでしょう。
ただし、ものすごいトリックというものがあるわけではないのです。
いうなれば私達に固定観念と言うトリックが仕掛けられると言うか、私達こそをだましているという大きなトリックがしかけられていますので読後は「やられた」と思うんじゃないでしょうか。

タイトルにもありますが「姑獲鳥」というのは妖怪の名前です。
作中で京極堂が詳しく説明してくれます。
ただこういう説明を面倒と思う方もいらっしゃるでしょう。
この説明を長いなぁと思うならそこはささっと流して読んでもストーリー的に支障があるわけではないと思いますが、読んでおいたほうが読後感が味わい深くなることでしょう。
民俗学的な話でもありますので、「妖怪」をただそのまま怖いもの、想像のものとしてとらえるのではなく現実のこととして受け入れるという視点もかなり面白いです。

妖怪の話と言うのは、水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」なんかでいっぱいでてきて現代人にもなじみのあるものだと思うので、わりととっつきやすい本だと思います。