そして二人だけになった 森博嗣 

 

森 博嗣 / 講談社(2001/11)
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超天才で美貌も財力もあるが盲目の若き科学者勅使河原潤とそのアシスタント、そして科学者、医者の6人が密室に閉じ込められる。
その中で起こる連続殺人。
最後に残ったのは勅使河原とアシスタントだけ!
一体犯人はだれなのか?

この話の舞台となるのは、世界最大級の海峡大橋(モデルは明石海峡大橋だと思われる)を支えるコンクリートの塊「アンカレイジ」
ワイヤーをたるみなく張るための重石です。
その内部の「バルブ」という空間には宿泊施設が整っており、この機能を試すためという名目で彼ら6人は中に入っていくことになります。
「バルブ」は実は核シェルターであり非常時には安全のため内部からは開けられないようになり、封鎖された出入り口には水がたたえられ、無理に開ければ水が建物内に流れ込む構造になっています。

外部との連絡を取るための、通信設備が破壊され完全に孤立した中で起こる連続殺人。
残った勅使河原とアシスタントは互いに疑いながらも密室脱出のため協力します。

冒頭に勅使河原の影武者を演じる腹違いの弟とアシスタントの双子の妹が登場しますが、実は密室に閉じ込められているのはこの弟と妹なのです。
つまりどちらも本人ではない。
文章は偽者二人の文章でつづられていきます。
脱出し助けられた後も、本物の二人の行方は不明です。
読んだ人が「こういうことだろう」と想像することさえ計算にいれられていると思われる文面づくりです。
最初から読んでいれば二人が偽者なのもわかるし、そう話を持っていったのは本物であることもわかるわけですから「黒幕」が誰かということについて、確実に想定できるでしょう。

偽勅使河原は自分達が置かれた状況をそして使われたであろうトリックを素晴らしい推理で説明します。
いかにも本格という感じの推理ですから、本格ファンも満足な謎解きです。
しかしさらにどんでんがえしが待っています。

こういうラストもいいですけどね。
個人的には本格謎解きで終って欲しかったですね。
タイトルが二重の意味で使われていることに読後気付くでしょう。
この作家さん。タイトルに毎回凝ってるなぁと思います。タイトルも英語のサブタイトルも、作品の真理を表現してるので作者の意図もわかりやすく「本」という媒体をフルに活用した作品づくりをしています。
読む前のタイトルを読んだ感想と読後の感想は異なるので、ぜひ読後にもタイトルを見返していただきたいです。