捩れ屋敷の利鈍 森博嗣 

 

森 博嗣 / 講談社(2002/01)
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秘宝『エンジェル・マヌーバ』が眠る『メビウスの帯』構造の捩れ屋敷。密室状態の建物の内部で死体が発見され、秘宝も消えてしまった。さらに、完璧な密室に第二の死体が!招待客は保呂草潤平、そして西之園萌絵。探偵は前代未聞の手法によって犯人を言い当てる。

Vシリーズ第8弾。
S&Mシリーズの西之園萌絵国枝桃子がメインとして登場し、反対に小鳥遊練無香具山紫子瀬在丸紅子などは事件と関わりをまったく持たないので、Vシリーズの番外編と言うべき作品です。

『魔剣天翔』で登場した宝剣『エンジェル・マヌーバ』がついに保呂草の眼前に現れます。
(どうして『エンジェル・マヌーヴァ』とこの作品では表記されてないのでしょうね?不思議です)
怪盗が主役のVシリーズよりもミステリ色の強いS&Mシリーズのキャラが出演しているせいか、かなりミステリに重点が置かれてます。
密室殺人という謎が2つも発生。
しかもいかにも密室。
素敵です。

森氏の作品はミステリのトリックうんぬんよりも登場人物達の特異な考え方のほうがメインのような話が多いのですが(そこに惹かれている読者も多いことだと思われます)これは二つのシリーズが融合したことによって、ミステリの部分が強く出たのではないでしょうか?
また、この作品講談社ノベルス20周年記念のためのメフィスト賞作家による書下ろしであり、講談社側が『密室本』と銘打って本文を袋とじにするという意匠を凝らしたので、すべての参加作品は『密室』を強く意識して書かれています。
なのでなおさら、ミステリ要素が強くなったと考えられます。

本格ファンの私も十分楽しめる作品でした。
分量もさほど多くはなく、通勤・通学しながらでも1日2日で読めそうです。
すっきりとしたミステリだと思います。
どうやらS&MシリーズとVシリーズは浅からぬ縁がある模様。
一体誰なんでしょうね?最後で保呂草が言っている人物は。