四季〜冬〜 森博嗣 

 

森 博嗣 / 講談社(2004/03/06)
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天才科学者真賀田四季の孤独。両親殺害、妃真加島の事件、失踪、そしてその後の軌跡。彼女から見れば、止まっているに等しい人間の時間。誰にも理解されることなく、誰の理解を求めることもなく生きてきた、超絶した孤高の存在。彼女の心の奥底に潜んでいたものは何か……?『四季』4部作ついに完結!!

いきなり出だしがSFチックです。
名前がカタカナだったりとかしてますし、ヘンな乗り物が出て来たりしてます(笑)
犀川という人物が登場してますが・・・どうも既出の犀川ではない印象を受けます。
その会話の部分で。
『春』と同じように四季の中に別人格が存在しその人格との対話で話が進む部分と、彼女を捕らえようとする集団との駆けひきの部分と、久慈老人との対話の部分とに大まかにわかれます。
読んでいくにしたがって「?」って感じになるとおもいます。
というのも四季の目が青かったり。
SFとしか思えない設定が次々に出てくるからです。

『女王の百年密室』を読んだことがある方なら、あれにミチルという人物が出てきてることを知っているでしょう。
あの作品を読んだ時に「あれ?」と思った人も多いはず。
どうもアレとリンクしてるようです。
気になる方は一読を。

つまり時間軸は『秋』からかなり後といえるのではないでしょうか。
他のシリーズの人物は四季の記憶の中でリピート再生されていますが、現実としては出てこない。

この作品を貫くのは『四季の孤独』でしょう。
彼女は天才ゆえに孤独でしたが、それを貫き通したって感じですね。
誰も追いついてこないし、誰も追い越さない。
一緒に歩いてくれる人は一人としていない。
周りに人は居ても同じ速度ではない。
上に立つ人間なら誰でも感じる孤独です。
それに加えて、既知の人物がいないという設定になるとなおさら際立ちますね。

私見としては『天才だから孤独なのではなく、人はみな等しく孤独だ』という意見なので、彼女の考える孤独が特殊なものではなく、特に辛いものではないというのは理解できます。

読後は茫漠とした寂寥感につつまれます。
この本は四季の孤独を読者に伝え、感じさせるための作品なのでしょう。
十分伝えられてると思います。
ただし、コレだけ読むと・・・いまいち感じられないのでやはり各シリーズ読破の上、読むのがよいかと思います。