四季〜夏〜 森博嗣 

 

森 博嗣 / 講談社(2003/11)
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米国から帰国した真賀田四季は13歳。すでに人類の中で最も神に近い、真の天才として世に知られていた。叔父・新藤清二と行った閉園間近の遊園地で、四季は何者かに誘拐される。瀬在丸紅子との再会。妃真加島の研究所で何が起こったのか?『すべてがFになる』で触れられなかった真相が今、明らかになる!

四季の両親殺害に至るまでの軌跡が描かれています。
『すべてがFになる』を読了された方ならお分かりでしょうが、その原因になったことや殺害の場面などですね。
『すべてがFになる』では過去の事件として詳しくは触れられていませんでしたので、読まれた方なら「ああ、そういう流れか」と再確認できるかと思います。
でもこのシリーズは推理小説ではないですよね。
「四季シリーズ」はS&MシリーズとVシリーズの楽屋裏のような感じです。
S&MシリーズでもVシリーズでも四季が「人間を超越した神のごとき存在」として理解しがたいものとして描かれているのに対して、このシリーズは四季の思考がトレースされているので、『真賀田四季』という人物が理解しやすくなっていると思います。
四季と言う人物にスポットライトを当てたくせに、彼女がなぜ叔父の新藤をそんなに気に入ったのかという理由が書かれていないのが不思議です。
感情を理解していないような書かれ方してるにも関わらず、なぜ新藤にだけ執着しているのか。
大抵の事柄を自分のなかで対話して結論を出しているのに、なぜ彼への感情・執着に関して分析がなされなかったのでしょうね?
どうせならそこに言及すべきじゃないかな、と思いました。

まぁその本来の彼女の性質から考えて言及すべき事柄であるにも関わらず、突っ込んで書かれていないと言うことが彼女の『人間性』を表しているのかもしれませんね。
人間は・・・矛盾する生き物ですから。

この作品では、Vシリーズと時間的に同軸ですので、Vシリーズの登場人物達が出てきます。
もちろんVシリーズを知らなくても楽しめる作品だと思いますが、知ってると2度おいしい?かも。