すべてがFになる 森博嗣 

 

森 博嗣 / 講談社(1998/12)
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妃真加島という孤島に建てられた真賀田研究所。
そこにはかつて「天才少女」の名をほしいままにし、現在も「天才」である真賀田四季が世俗と隔離された状態で生活していた。
彼女は14歳のとき実の父母を殺し、公判では心神喪失で無罪となったもののそれ以来この孤島で一目を避けるようにして生活しているのだった。
この妃真加島にゼミ旅行に来た犀川ゼミ一行西之園萌絵
ハイテク研究所を訪れた犀川萌絵はコンピューターが管理するその建物内で殺人事件に遭遇する。
真賀田四季博士の部屋から、ウエディングドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れたのだ!
しかし部屋は四季博士を隔離するため、以前から誰も入ることも出ることもできない状態だった。
では一体どうやって犯人はこの密室から脱出したのだろうか?
さらに起こる殺人事件。
果たしてその真相は・・・?

某国立大で先生をしながら作家であるという変わった作家さんです。
この作品は俗に「S&Mシリーズ」と呼ばれるN大助教授犀川創平とN大の生徒西之園萌絵のコンビが謎を解いていくシリーズの第1巻です。全10巻で完結。
森氏のミステリは「理系ミステリ」と称されているようです。
「理系」の人物が「理系」の舞台で活躍するということを指して「理系ミステリ」と言われてるわけではないと思います。
その「理系」っていうのがよくわかりませんが、私個人が分析するに「死体に対しての哀惜が感じられない」ということではないかと。
文学的、と聞けば多分感情豊かな話を思い浮かべるでしょうし、その人物が死んだとなればその人の人格の喪失及び機能しなくなった体=死体に対しても思い入れがあるものでしょう。
しかし、森氏の作品では生きている人物と死体は別に切り離されているように感じられます。
死んだものは単なる有機物であって、人間ではないという切り替えの早さ。
それをモノとして捕らえることへの順応の早さ。
それが「文系」という表現に対する「理系」の定義ではないかと思うのですが。

だからそういう感情が若干少ない感じがするので、人によっては受け付けないこともあるかもしれないです。
このシリーズは後半になるほど、感情が出てきているように感じます。
それに考えられたトリックと言うのはどれも本格に恥じない素晴らしいトリックです。
問題出題から解答までが、キレイに書かれているなと思います。
実は私達にはページを開く前から事件のヒントが与えられていることに読後気付くでしょう。
私は衝撃的でしたね。
この作品が本格ファンに与えた影響って大きいですよ。

萌絵は現実離れしたお嬢様で森氏の作品にはそういうお嬢様がよくでてくるので「実はお嬢様に憧れがあるのかな?」とか犀川は実は森氏の投影ではないかとかいろいろ思うところもあります(笑)
変わった言語センスだなと思うので、その辺の変わっている感じも楽しみながら読んで下さい。