クビキリサイクル 西尾維新 

 

西尾 維新 / 講談社(2002/02)
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絶海の孤島に隠れ住む財閥令嬢が
「科学」「絵画」「料理」「占術」「工学」
それぞれの五人の「天才」女性を招待した瞬間
「孤島×密室×首なし死体」の連鎖がスタートする!
「工学」の天才美少女「青色ザヴァン」こと玖渚友(♀)とその冴えない友人「戯言遣い」いーちゃん(♂)は、「天才」の凶行を「QED」できるのか?

この作品で第23回メフィスト賞を受賞されたようです。

これも見てのとおり表紙がアニメチックな絵です。
中身は本格ですね。
枠組みとしては。
きみとぼくの壊れた世界」よりはかなり本格してます。
密室での首なし死体の発見とか、
孤島というシチュエーションとかね。
キャラが濃いっていうのは確かですが、それでもまだ殺人事件に焦点が絞られてる、かな。
話は「いーちゃん」と呼ばれる男の子(18歳か19歳かぐらい)の視点で進みます。
ただこれも前のと一緒で、主人公の考えかたってかなり変わってるので一人称で書かれているにも関わらず、感情移入しにくい。
彼は何事に対しても最後の言葉は「戯言なんだ」という人で、ペシミスティックな感じの子です。
私、「戯言」という言葉にはなんだか自嘲の響きがあるように感じられて、あんまり「いーちゃん」が何度も言うので思わず国語辞典調べましたよ。
金田一先生の国語辞典で(笑)

戯言=(名)じょうだん(に言う言葉)

だそうで。
じゃあ私が抱いている戯言という言葉の自嘲の雰囲気っていうのは間違いだったのかしらん?と思いました。
でも私にとってはこの言葉は自嘲の意味合いが含まれてるので、どうしても「いーちゃん」はひねくれものの卑屈な男なイメージになってしまったのでした。
世の中に何の関心もなく自己破壊的な人間かと思えば妙に普通の感情で書かれていたりするところもあって、一定してないキャラクターです。
それにしても変わったキャラです。
それに彼の友人の玖渚友も自分のことを「俺様ちゃん」という変な呼び方で呼びますし、キャラ設定はかなり濃いです。
あと、「いーちゃん」には何だかドロドロした過去があるようなことが所々に書かれています。
ちょっと気になる・・・。

この作品に何人も「天才」をだして「常人」と考え方や世界観が違うというところが前面に出てきてるので、変わってるんですよね。
普通の作品って、どっちかといえばそういう異端は少数であって後は我々の感覚に近い人が大勢いるって感じなのに、これは普通の人は存在しない。
なんていいますか、「殺人」=「悪いこと」っていう前提から考えましょう、ほんとにそうなのかしらっていう流れでしょうか。
人が死ぬこと自体には意味はないという考え方があるのか、殺人犯は断罪されるという社会のルールとはちょっと違うかも。
それがこの作者の世界観なのかなぁ?
とも思います。