上高地の切り裂きジャック 島田荘司 

 

島田 荘司 / 原書房(2003/03)
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『上高地の切り裂きジャック』
2000年、上高地で女優の死体が発見された。
しかも腹部を切り裂かれた状態で―臓器を取られ代わりに石がつめられていた。
彼女の膣内から発見された精液という決定的な物証により、ひとりの容疑者が浮かびあがった。
しかし彼には鉄壁のアリバイが・・・!
さらに被害者の女優はロケで上高地に来ていたが、出番が終り東京に帰ったはずだった。
なのになぜ死体は上高地で発見されたのか?
何もかも辻褄があわない・・・。
御手洗の一声が事件のすべてをくつがえす!

『山手の幽霊』(併録のシリーズ中編)
1990年4月、まだ御手洗が日本に居た頃の話です。
山手の住宅街に建てられた一軒の家。
その家には地下シェルターがあった。
家の持ち主正木は前の持ち主から買い取って入居すると同時に地下シェルターへの入り口を封印してしまった。
にもかかわらず、1月後地下シェルターから猛烈な悪臭が・・・。
中を確かめてみると、そこには前の持ち主大岡のミイラ化した死体があった。
果たして彼は一体いつからそこに居たのか?
正木が封印する時にはしっかりとだれも居ないことを確認したという。
さらに根岸線の運転手が幽霊を見たといって、恐怖あまり入院しているという話をきかされる。
終電車を運転していたその男性は、突如飛び出す男性、何もないはずなのにまばゆく光るトンネル、そして天井から覆い被さってくる女性の幽霊を見たという。
果たして御手洗にこれらの謎が解けるのか!?
どちらも物悲しい物語です。
特に「山手の幽霊」のほうが物悲しい。
近年、御手洗シリーズは「物悲しい」そして「救われない」感じの話が増えているような気がします。
社会的な問題を話に盛り込んでいるからでしょうか。
現実の空虚さと世間の無関心さを作品を通して、伝えられてるような気がします。

どちらの話も謎自体は面白いと思います。
現実に可能かどうかはさておき(笑)
いや、気合があれば可能かも。

分量はさほど多くなく、楽に読めます・・・シリーズが長くなってきてるだけに自然に出てきてる人も「誰?」って思うかもしれませんが(笑)
御手洗シリーズは日本版ホームズシリーズだと思うので、わざとそういうような書き出しになってます。
つまり未発表の事件を何年もたってから助手である石岡君が発表する、という。
相変わらず石岡君の自信喪失は治っていませんが、いつの日か御手洗が日本に、そして彼のもとに戻ってきてくれるといいなぁと一ファンとして思います。