龍臥亭事件(上・下) 島田荘司

 

島田 荘司 / 光文社(1999/10)
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御手洗潔が日本を去って1年半。
彼の友人で推理作家の石岡は、突然訪ねてきた二宮という女性の頼みで、岡山県まで悪霊払いに出かけた。
2人は霊の導くままに、寂しい駅に降り立ち、山中に分け入り、龍臥亭という奇怪な旅館にたどり着く。
閉鎖された宿の主と宿泊交渉している最中、2階の部屋で琴を弾いていた女性が眉間を猟銃で撃たれて死亡し部屋からは出火する。
しかし部屋は密室。
そして部屋はガラス張りで目撃者に寄れば、何もないはずの壁のほうから打たれたという。
それを皮きりに起こる大量連続猿人事件。
村人の言う「村の業」と「因縁」とは何か?
石岡が解き明かす50数年に及ぶ壮大な謎とトリック!

島田氏の『御手洗シリーズ』でおなじみの石岡君が活躍するお話です。
まったくの番外編として作られている感じなので、御手洗シリーズを知らなくても十分に楽しめます。
八つ墓村」もそうですが、「津山32人殺し」がモチーフとなっています。
推理作家の創作意欲を書きたてるテーマだということでしょうか。
そこの話がちょいと長いのですが(苦笑)そこが一応ポイントなのでちゃんと読んでくださいね。

見立て殺人やら「32人殺し」の亡霊やら、いろいろあって読んでいくと謎が謎をよんでって感じになっていきます。
なぜ?誰が?何の為に?と不思議に思い始めたらもう止められません。最後まで読みきらないと気持ち悪いです。
複雑に絡んだそれぞれの事情。
本格だけど、ロジカル一辺倒ではなく人の理不尽さなんかもうまく表現されています。
このあたりの緻密さ、さすが島田氏です。
最後まで読めば、「ええっ?そんなところにも伏線が!」と思うでしょう。
ですから読了後もう一度読み返されることをお薦めします。
新たな視点で新たな発見が出来ることでしょう。
島田氏の作品はそういう仕掛けが多いですね。

石岡は御手洗に置いてきぼりをくらってますが、それは石岡の成長(もうおじさんだけど)を促すために必要なことなのだと御手洗シリーズファンなら思うことでしょう。
それでも名探偵と助手はセットでないと嫌なんですけどね。
「龍臥亭以前、以後」で御手洗シリーズの内容は変わっていきます。
御手洗は御手洗で、石岡は石岡で、それぞれ出くわした謎を解いていくという形式に変わります。
二人に精神的な繋がりはあっても一緒に行動はしていません。
そこがファンとしては悔しいところでもあり(笑)
やっぱり一緒に行動して欲しい。

御手洗シリーズを読んだ人なら、「石岡がんばれ!」という気持ちにもなります(笑)
御手洗シリーズ読んだことがなくても楽しめます。