女には向かない職業 P.D.ジェイムズ 

 

小泉 喜美子, P.D.ジェイムズ / 早川書房(1987/09)
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探偵稼業は女には向かない。ましてや、22歳の世間知らずの娘には―誰もが言ったけれど、コーデリアの決意はかたかった。
自殺した共同経営者の不幸だった魂のために、一人で探偵事務所を続けるコーデリア
最初の依頼は、突然大学を中退しさらに自ら命を絶った青年の自殺の理由を調べて欲しいと言う父親からのものだった。
コーデリアは早速調査にかかったが、やがて自殺の状況に不審な事実が浮かび上がってきた・・・ケンブリッジ郊外の田舎町を舞台に新米探偵のひたむきな活躍を描く。

コーデリア・グレイは茶髪で猫を思わせる容貌の22歳の可憐な女性。
頭脳は明晰で行動は冷静。
自分を律して禁欲的で強がりでかわいげの無い感じすらする女性です。

ストーリーは彼女の共同経営者であったバーニイ・ブライドが己の将来を悲観して自殺するところから始まります。
彼女はさして売れてもいない(というかまったく依頼の来ない)事務所を一人で、やっていこうと心に決めるのです。
バーニイのために。そして自分のために。
一種殉教者めいたかたくなさも感じられます。

話の進みはゆっくりです。
展開の早い最近の推理小説を読みなれた人には少しつらいかな?
コーデリアが徐々に事実を掴み、自殺の真相に近づいていくその過程がイギリスの風景を容易に想像させる美しい筆致で書かれています。
コーデリアバーニイがかつて勤めていた警察時代の上司アダム・ダルグリッシュ警視の賞賛話をたくさん聞かされていました。
その賞賛話のなかで語られるダルグリッシュ警視の捜査方法をおもいだしながらコーデリアは捜査をしていきます。
つまり間接的なダルグリッシュ警視の弟子ということになります。
このダルグリッシュ警視P.D.ジェイムズの産んだ 名探偵ですから、この作品はダルグリッシュ警視モノの番外編といったところでしょうか。

コーデリア・グレイ・・・彼女の名前を他のところで目にした方も多いかもしれないですね。
彼女はマンガ「名探偵コナン」に出てくる灰原哀の名前の元となった人物です。
彼女がこの「灰原哀」という偽名をつかうと決める段階で「V.I.ウォーショースキー」の「あい」と「コーデリア・グレイ」の「グレイ」から取って来たと言うことですから。
STRONG>ウォーショースキーはサラ・パレッキーが生み出したシカゴを舞台に活躍する空手の達人の女性探偵です。
これはハードボイルドです。
マフィアやらなんやらに一人で立ち向かう強い女性です。かっこいいです。
でも「コナン」における「灰原哀」はどうもキャラクタはコーデリアを元に作られてる感じです。
つらい過去、感傷にとらわれることなく、感情をあまり表に出さない冷静さ、しかし不人情ではなく優しい一面もあり、ストイックで、自分に厳しく、知能は高く、度胸もある。
髪は明るい茶色で。

この作品の中で、コーデリアは何者かに古井戸のなかに突き落とされ壁に四肢を突っ張り上まで這い上がるというシーンがあるのですが・・・コナンの中でも灰原が黒の組織に追い詰められパイカルを飲んで体を大きくして煙突を這い登るシーンがあります。
灰原もそこで「まるで井戸に落とされたコーデリアね」という台詞を言うので知ってるものにはくすっと笑えました。
私としては、推理小説ファンにこそコナンを楽しんでもらえると思うのですが(笑)
コナン自体の推理は、完成度は高くないですけど、
マニアックな見方をすればとても楽しいです(笑)
かなり前に流行った「ウォーリーを探せ!」的な楽しみと言うか、気付いた自分がうれしいというか。

この1冊コナンファンにもオススメ!
人気キャラ灰原の元になった人物を知っておくのもいいですよ!