アリア系銀河鉄道〜三月宇佐見のお茶の会〜 柄刀一

 

柄刀 一 / 講談社(2000/10)
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三月ウサギに誘われ、宇佐見博士は目くるめく謎また謎の時空へ。超新星・柄刀一の講談社ノベルス初登場を祝し、現代本格ミステリ界を代表する論客、佳多山大地、二階堂黎人、福井健太、巽昌章各氏の入魂解説つき作品4篇+ボーナストラック1篇収録の充実。論理と幻想の幸福な結婚の歴史に新たな一ページが!

なんだか、盛り上がっちゃってる系の紹介文ですね(笑)
『論理と幻想の幸福な結婚の歴史』と書かれてもよくわからんでしょう(笑)
内容がいまいちわかりづらいので、以下解説です。

宇佐見博士はサンフランシスコ近郊の研究施設に勤めています。
結構歳で・・・60くらいでしょうか。
無類の紅茶好きで、研究所の中庭でTeaTimeを楽しんでいる時に限って、異次元の世界に引きずり込まれ、異次元の世界で起こる殺人事件を解決する探偵となるのです。

言語と密室のコンポジション』では『字義原理・実存の猫』が突如として現れ博士を密室殺人の現場へ誘います。
この世界では、博士が地の文で思ったことがそのまま現実になる世界です。
しかも、殺人現場は『言語の密室』だという・・・。
ありえない世界でおこる、その場所特有の密室殺人です。
サブタイトルのとおり、『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる、なんだかわからん不思議世界で起こる密室殺人です。
ノアの隣』ではダーウィンの進化論におけるミッシングリングの謎とノアの箱舟が動けないはずの狭い箱の中でどうやって180度反転しているのかという謎に迫ります。
探偵の匣』では宇佐見博士の同僚である吉武博士が何者かに殴られ、毒を飲まされあと数時間の命という事件の謎を解きます。
その何者かは吉武博士の夫人の浮気相手のようなのですが・・・
最後に明らかになる読者を欺くトリックにはちょっとびっくりするでしょう。
アリア系銀河鉄道』では鶴見博士の娘マリアとお茶をしているシーンから始まりますが、鶴見博士は皮膚から吸収される毒物である『×酸××ウム』で何者かに殺されます。
しかしそれはマリア宇佐見博士が乗ったバスが事故を起こし、マリアと博士が生死の狭間を漂っている時の話なのです(は〜わけわからん(笑))
二人が話しているところへ、宮沢賢治のような『銀河鉄道』が現れ(あれも要は死者を運ぶ列車でしたね)二人は乗りこみます。
二人は銀河を旅しながら鶴見博士を殺した犯人を推理するのです。
ボーナストラックである『アリスのドア』では密室に閉じ込められた宇佐見博士がそこから脱出する話です。

いきなりわけのわからん設定に放り込まれるので、「なにが起こったの?」なんて思ったところで解答はありません。
本格ミステリの謎解きと不思議のアリス系の不可思議な世界が融合したという変わった試みの本です。
ですからみなさんが普段思い描く本格ミステリとは異なると思いますが、これはこれで、この世界観でなければなし得なかったミステリなので面白いと思います。