fの魔弾 柄刀一 

 

柄刀 一 / 光文社(2004/11/18)
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友よ崩せ、絶望の密室。
信じるもの、守るべきもののために何ができるか。友(friend)、信頼(faith)、そして隠された事実(fact)―。

浜坂憲也は二体の銃殺死体と共に、マンションの一室で発見された。ドアも窓も完璧に、施錠され、誰かが出入りした形跡は皆無。殺人罪で起訴された憲也は犯行を全面否定、しかし裁判でも重要な何かを隠している……。求刑の刻が迫る中、南美希風は旧友の無実の証明に乗り出すが、自らも絶体絶命に―。

本格長編です。
一応「OZの迷宮」の続編ですが、「OZの迷宮」は特殊な構成の作品であったため、本作だけ読んでもなんら支障はありません。
浜坂憲也の密室の謎と、南美希風>が犯人に閉じ込められた謎とが平行して進みます。
美希風は自分がその立場に立ってみてようやく憲也の密室の謎が解けるわけです。
探偵役である美希風もキャラクタが濃いわけでもないし、変な人が出てくるわけでもないので、少し薄味に感じられるミステリです。
日常の静かな危険を描いた作品でしょうか。
ふと気付いたら、憲也のような立場に誰でもなりうるという怖さ。
冤罪で逮捕されることも、そのまま事実として確定され死刑となることもありうる怖さ。
そしてこの密室に使われるトリックもあまりに日常的です。
何気ない日常のそばに落ちている危険こそ、日々平和に生きてるはずの私達にとって怖いものでしょう。
人を信じることが難しくなった現代だからこそ、この話の怖さがわかるかもしれません。