ゴーレムの檻〜三月宇佐見のお茶の会〜 柄刀一

 

柄刀 一 / 光文社(2005/03/25)
Amazonランキング:232,530位
Amazonおすすめ度:


神に見捨てられた牢獄で、こんなにも君は美しい。

謎と幻想と浪漫に満ちた、宇佐見博士のお茶会にようこそ。
サンフランシスコ近郊の研究所に勤める博物学者・宇佐見護博士は、紅茶を飲みながら思索をめぐらし、幻想の旅にでる。M・C・エッシャーの絵画が現実化した街へ。あるいはシュレディンガーの猫の生死の境へ。はたまた未だ書かれ得ぬ空白の物語の中へ。そして、神に見捨てられた牢獄と、神の助けで脱獄した囚人の傍らへ……。呪わしくも美しい、浪漫派本格推理の傑作!杉江松恋氏の詳細な解説を附す。

『エッシャー世界』
『シュレディンガーDOOR』
『見えない人、宇佐見風』
『ゴーレムの檻』
『太陽殿のイシス(ゴーレムの檻現代版)』
の五編です。

私はエッシャーの絵が好きでハウステンボスに行った時に堪能してきましたので、『エッシャー世界』はかなり想像できました。
ハウステンボスにはエッシャーの世界を旅するアトラクションがあるのです。

エッシャー世界
ある画家の絵には彼の妻と娘を殺した犯人の名が書いてあると言われていた。
しかし、犯人は未だ不明。
そしてその謎を解く最中に宇佐見博士はエッシャーの絵画の世界へ迷い込む。
(いきなり異世界へ飛ぶんですよね〜。この作品)
エッシャーの世界から元の世界へ帰るヒントを知っているはずの人間が誰かに殺された。
宇佐見博士はその謎にも取り組む。
シュレディンガーDOOR
半年のあいだLAとSFを騒がせた爆弾魔『Praボンバー』は博士の同僚モーレン博士だった。
モーレン博士の部屋には自身が『Praボンバー』だという告白文と、死体そして死体かどうか不明な肉体。
モーレン博士は双子でどちらが博士でどちらがその弟なのか見た目では判別つかない。
そして一体は爆弾の取りつけられたケースの中に横たわっていた。
以前あった『中国人殺害事件』の犯人が弟であった場合は弟も殺しておいたというがケースの中の人物が博士なのか弟なのか生きているのか死んでいるのかまったく分からない。
かくして『中国人殺害事件』の真犯人を暴き出さなくてはならなくなってしまった。
雪の密室殺人と言う謎を。

見えない人、宇佐見風
これは作中作ですですね。
宇佐見博士は知り合いにあるミステリの謎を解いてみないかと原稿を手渡される。
主人公の女性が脅える、謎の声の正体を暴けというミステリ。
これは我々読者にも同じだけのヒントが提供されてますから、謎解きにチャレンジしてみてもよいのでは?
ゴーレムの檻
厳重管理の牢獄から囚人(通称:ゴーレム)が消えた!
そしてゴーレムに脅えていた囚人が自分の独房で殺される。
ゴーレムはいかにして外へ脱出したのか?
そして殺人者はゴーレムなのか?
内と外の逆転。
同時に現実世界では、屋根から転げ落ちた職人が中庭を向いて助けを呼んでいるにも関わらず、中庭に助けるために集まったスタッフに目撃されないと言う怪現象が起こっていた。
はたして職人は何処へおちたのか?
そこはゴーレムの檻だったのか?
太陽殿のイシス
『ゴーレムの檻』で助け出された職人が宇佐見博士に語る現代版『ゴーレムの檻』
宗教団体の一室。
厳重に監視された部屋から一人の男性が姿を消した。
退路は全て人がおり、口を揃えて「だれもこなかった」という。
しかし、その男は確実に外へ出ていったのだ。
ではどのようにして?
謎を解いた最後に再び宇佐見博士大ピンチ!

捩れまくった世界にようこそ!という感じです。
基本的に不可思議世界です。
この不思議さはマジックショーのようでもあります。
変わった味付けですが、面白いです。