御手洗潔対シャーロック・ホームズ 柄刀一 

 

柄刀 一 / 原書房(2004/11)
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シャーロック・ホームズは『現在』によみがえり、かの地で御手洗潔とあいまみえた。御手洗石岡の目前で咆哮と巨大な足跡を残していった巨人、ホームズワトスンのいる二階の窓から覗いていた巨人、そして屋根の上に載せられていた死体……。不可解で巨大な謎が押し寄せる中、御手洗ホームズの『推理対決』の先に見えた真相とは―。
対決編『巨人幻想』250枚のほか、御手洗ホームズが活躍する各2編を収録。
本格ミステリ界の『魔術師』柄刀一が贈る壮大なパスティーシュ作品集

タイトルのままですね(笑)
島田荘司氏の生んだ名探偵・御手洗潔とその助手・石岡和己
コナン・ドイルの生んだ名探偵・シャーロック・ホームズとその助手・ジョン・H・ワトスン
二組の名探偵コンビが織り成す謎と幻想の世界です。

短編4つと中編1つの作品集です。

『青の広間の御手洗』
御手洗石岡がノ―ベル賞受賞式典において、ひとりの老人の考え方を変えるというお話。
脳の病気について詳しく述べています。
本家御手洗もこういうこと言いそうです。
さすが実力派の書くパスティーシュはスゴイです(笑)

『シリウスの雫』
反重力の里と呼ばれるイギリスのある町にある変わった石の遺跡。
その遺跡には地面に上るような階段が・・・。
そして翌日、遺跡から地面に頭をつけあぐらをかいたまま逆立ちしてような姿勢で発見される老人の遺体。
しかも其の体は紫のペンキで塗られていた。
そのそばで誰かに頭を殴られ昏倒していた石岡に老人殺害の容疑がかかる。
老人を殺したのは石岡か?そうでないならば一体だれが?なんのために?

よくできたお話です。
トリックもミステリらしいし。御手洗らしいです。
この作品は(上の作品も)他の本にて既出の作品なので、島田氏の作品を残さず読んでいる方なら既読の作品だと思います。

『緋色の紛糾』
これは日本によみがえった(?)ホームズワトスンの冒険譚。
勿論タイトルは『緋色の研究』のもじりですね(笑)
それに島田氏の作品を好まれる方ならご存知でしょうが、氏は『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』という夏目漱石ホームズ達が出会う話を書かれています。
その話の雰囲気に似ています。
本家のホームズとはちょっと違う感じですね。お笑い?
まぁ現代の日本に甦ってる時点で無茶な設定なのですが(笑)
馬車で走ったらいかんでしょ(笑)
それにホームズの推理のっけから外れてるし(笑)
またそれをワトスンが盲目的に信じるし。
おかしいです。
お話は密室殺人の謎。
これはちゃんとミステリしてます。

『ボヘミアンの秋分』
これも言わずと知れた『ボヘミアの醜聞』のもじり。
出てくるのは愛鈴・アドラー(笑)
アイリーン・アドラーのもじりですね。
そしてお話自体が、『ボヘミアの醜聞』にある意味忠実。
愛鈴の家に忍び込む手口も、挨拶も。
しかし、この愛鈴の館の中で殺人事件勃発。
果たして犯人はだれか?と言う謎が・・・。
知っていれば違いがおかしいですね♪

『巨人幻想』
ワトスン博士が残した未発表の手記を求めてイギリスへやってきた御手洗石岡
その手記を求める動機となったのは夏目漱石ホームズが知り合いだったという情報をつかんだから。
島田氏の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』でね。
そしてそこで出会う濃霧の中をさ迷い歩く巨人。
ニューライル大学の学長の孫ピートが誘拐され、さらには窓から目撃される巨人の顔。
屋敷の風車塔に住む変わり者の叔父マニング
巨人に殴られたように凹んだ風車塔の中で、ナイフで刺されたマニングが見つかる。
そして外には身元不明の男の死体が一つ。
これらの殺人事件と誘拐事件、そして巨人の謎を御手洗ホームズの名探偵がしのぎを削って謎を解く!
結構面白かったです。
巨人モチーフばかりですが、面白いです。
ホームズワトスンの存在はちょっと不思議ではありますが、その辺をあまり気にせず読みましょう(笑)

本の最後に島田氏の解説(?)が。
石岡が柄刀氏に書いた手紙とワトスンが柄刀氏に書いた手紙、そして石岡ワトスンの往復書簡がかかれています。
この最後の往復書簡がどんどん低レベルになっていっておかしいです(笑)
言葉だけはお互い丁寧なのに・・・。

御手洗ファンとホームズファンに捧げるミステリですね!
まぁ無茶な設定ではありますが、それも愛嬌と言うことで(笑)