殺意は砂糖の右側に 柄刀一 

 



「10円玉を持っていないか」という不思議な言葉を残しクラブ経営者が撲殺された。被害者は麻薬取引の疑惑を持たれていたが、その右手にはなぜか1円硬貨と50円硬貨が握られていた…。小笠原諸島から初めて都会に出てきた純朴で愛すべき天地龍之介は、数々の奇妙な事件に遭遇する。料理コンテストや国際線の機上、はたまたフィリピンの田舎町で…。学究一筋の青春を送ってきた龍之介が、科学者並みの頭脳とちょっとズレた感性で事件の謎に挑戦する。果たしIQ190の天才推理は?

この話は短編集です。
主人公は天地光章。30代前半の独身男。
彼はワトソン役です。文章は光章の視点でかかれます。
そしてこの作品の名探偵は「IQ190の天才」である天地龍之介。
童顔のためとってもそうはみえないが28歳。光章と龍之介はいとこです。
話は龍之介のおじいさんがなくなったため龍之介が後見人を探し出すため光章のもとを訪れたところから始まります。

龍之介の激しいぼけっぷり。
島でおじいさんと研究三昧の生活を送ってきたせいか純粋で、ものすごい天然ボケ。世間に悪があるなんて思ってないような天真爛漫さ。かわいいです。しかし確実に謎を解いてくれます。
光章は龍之介のお兄さんみたいな感じですね。
天才ではあるが、世間ずれしてて、周囲の人とうまくコミュニケーションがとれてない龍之介のフォローをしているのでいいコンビです。
あとこれに光章の想い人、長代一美という女性が加わって謎を解いていきます。
間に龍之介が入ってるばかりに光章と一美の間はあまりロマンスムードには発展せず(苦笑)

私はこの作家さんの「天才!龍之介が行く!」シリーズは有栖川有栖の「火村シリーズ」を愛読の方に特にお薦めします。
この柄刀さんもかなりロマンティックな文章の書き方をされるので、ちょっと読後の感じが似ています。
「火村シリーズ」のアリスも心の中での突っ込みが上手ですが(笑)こちらの光章さんも上手です。関西弁じゃないですけどね。
「火村シリーズ」よりは「龍之介シリーズ」のほうがよりほわほわとした温かみがあって「癒し系」推理小説って言ってもいいかと思います。
もちろんトリックも上手ですよ。
表題作「殺意は砂糖の右側に」はその知識に「へぇ」とひとりトリビアしたのでありました。

仕事で疲れてるとか忙しいといった状況でも「推理小説読みたいんだよねぇ。でもあんまり重苦しいのは精神的にきついから嫌」っていう方にもお薦めです。